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朝残業は残業代が発生する可能性が高い!残業代未払いの対処法と予防策

弁護士監修記事
労働問題
2023年12月28日
2024年04月22日
朝残業は残業代が発生する可能性が高い!残業代未払いの対処法と予防策
この記事を監修した弁護士
齋藤 健博弁護士 (銀座さいとう法律事務所)
女性のセクハラ被害解決を得意とする弁護士。慰謝料請求や退職を余儀なくされた際の逸失利益の獲得に注力。泣き寝入りしがちなセクハラ問題、職場の女性問題に親身に対応し、丁寧かつ迅速な解決を心がけている。
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業務上必要、かつ上司からの指揮命令下で「朝残業」をおこなった場合は、夜の残業と同様に残業代を請求できます。

朝残業が「残業」とみなされたにもかかわらず、会社側が残業代を支払わないのは違法です。

朝残業には残業代を請求できるケース・できないケースがあるため「自身の状況は朝残業にあたるのか」を理解しておく必要があります。

そこでこの記事では、

  • 朝残業が「残業」とみなされる条件
  • 朝残業でも残業代が発生するケース・発生しないケース
  • 朝残業しているのに残業代が支払われていない場合の対処法

について詳しく解説します。

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目次

朝残業でも残業代発生の可能性がある!

ここでは、残業代発生の可能性がある「朝残業」についてみていきましょう。

朝残業とは|始業時間前の残業のこと

朝残業とは、簡単に述べると「始業時間前におこなう残業」のことです。夜の残業と同様、正規の労働時間内に業務が終わらない場合に、始業の数時間前に出社して仕事をおこなうことを意味します。

「業務量が多いが、夜はできるだけ早く帰宅したい」という理由で朝残業ををおこなうケースも少なくありません。また、「必要な労働時間である」と認められれば、残業代の請求が可能です。

朝残業が「残業」とみなされる条件

基本的に朝残業は残業代の請求ができます。しかし、朝におこなう仕事が「朝残業」とみなされるためには以下のような条件があります。

一 労働基準法(昭和六二年法律第九九号による改正前のもの)三二条の労働時間とは、労働者が使用者の指揮命令下に置かれている時間をいい、右の労働時間に該当するか否かは、労働者の行為が使用者の指揮命令下に置かれたものと評価することができるか否かにより客観的に定まるものであって、労働契約、就業規則、労働協約等の定めのいかんにより決定されるものではない。

引用元:裁判例結果詳細 | 裁判所 - Courts in Japan

大切なポイントは、「労働者の行為が使用者の指揮命令下に置かれたものと評価することができるか否かにより客観的に定まる」という点です。

朝残業にあたるか否かは、会社や上司の指揮命令下でおこなわれているかどうかがポイントとなります。

朝残業で残業代を支払わないのは違法

残業をする時間帯は朝か夜かを問わず、法定労働時間・所定労働時間を超えている場合に残業代を支払わなければ違法です。

労働基準法37条 使用者が、第三十三条又は前条第一項の規定により労働時間を延長し、又は休日に労働させた場合においては、その時間又はその日の労働については、通常の労働時間又は労働日の賃金の計算額の二割五分以上五割以下の範囲内でそれぞれ政令で定める率以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならない。(後略)

引用元:e-Gov法令検索

法定労働時間と所定労働時間は以下のように明確な違いがあります。

  • 法定労働時間:労働基準法によって定められた労働時間の上限(1日8時間・週40時間)
  • 所定労働時間:あらかじめ会社と労働者とで合意している、労働者が働く時間

1日8時間以上の労働は法定労働時間を超える残業にあたるため、会社は1.25倍以上(労働時間ごとに規定あり)の割増賃金を支払う義務があります。

ただし、所定労働時間が6時間、残業時間が1時間の場合は法定労働時間内です。この場合は、割増賃金を支払わなければいけないという決まりはありません。

6時間の所定労働時間分のほか、働いた1時間の通常分の給与は請求できます。

朝残業で残業代が発生するケース

ここでは、朝残業で残業代が発生するケースをみていきましょう。

制服の着替えなど業務の準備を済ませておくために朝残業を命じられた場合

制服の着替えなど、業務の準備を済ませておくために朝残業を命じられた場合は、残業代が発生します。

会社や上司から「始業前に着替えを済ませておくように」と言われたり、着替えが済んだことを前提として始業時間に業務が開始したりする場合は、朝残業とみなされます。

指示があったわけではないが、暗黙の了解で朝残業せざるをえない場合

暗黙の了解の朝残業では次のようなケースがあります。そして、残業と認められるかどうかは事実上義務付けられているといえるような状態かどうかです。

  • 上司が早く来ていて、自分も早朝出社をしないといけない雰囲気がある
  • 振り分けられた業務が絶対に定時内に終わらない

早朝出勤をしないと人事査定上不利益を受ける朝残業として残業代を請求できる可能性が高いです。

始業時間前に必ず出席しなければならない朝礼などがある場合

始業時間前に必ず出席しなければいけない朝礼や会議などがある場合も、朝残業として残業代が発生します。

自由参加であったとしても、参加しないと業務上何らかの不利益が生じる・仕事の段取りについての説明がある、といった場合は残業代の請求が可能です。

上司から「早く出社して勉強しなさい」といわれた場合

上司から「早く出社するように」と言われた場合は、業務・勉強にかかわらず朝残業の対象です。

従業員自らの意思ではなく、上司の指揮命令による労働時間とみなされるためです。

朝残業でも残業代が発生しないケース

ここでは、どのようなケースだと残業代が発生しないのかみていきましょう。

通勤ラッシュを避けるために自主的に早く出社している場合

原則として、通勤ラッシュを避けるために自主的に早く出社している場合は残業代が発生しません。

業務との関連性が薄い・会社の指揮命令下ではない、という理由に当てはまるためです。

上司が早く出勤しているから気を遣って早く出社している場合

「上司が早く出勤しているから…」と気を使って早く出社している場合も、残業代が発生しません。

「朝残業」としてみなされるためには、業務における必要性や上司からの指揮命令があった、という条件を満たす必要があります。

フレックスタイム制や裁量労働制などで働いている場合

フレックスタイム制や裁量労働制などで働いている場合は、朝残業でも残業代が発生しない可能性があります。

いずれも自分で働く時間を決定することができる働き方であり、「会社の指揮命令下で朝残業をする」という状況が発生しないと想定されるためです。

たとえば、フレックスタイム制で社員が自主的に「明日は10時から19時まで働く」と決めた場合は、会社が「9時に出社するように」という指示を出すことはできません(コアタイム内、特別に就業規則等に記載がる場合を除く)。

朝残業の残業代はいくら?時間外労働の給料計算

朝残業(時間外労働)の給料計算は以下の方法で算出できます。

  • {基礎賃金(通常の労働時間分の賃金)×割増率}×残業時間数 

割増率は残業時間や休日出勤か否かなどで変動します。

  • 1ヵ月の合計が60時間までの時間外労働、および深夜労働:25%以上
  • 1ヵ月の合計が60時間を超えた時間外労働:50%以上
  • 休日労働:35%以上
  • 深夜労働:25%以上
  • 深夜時間の休日労働:60%以上
  • 1ヵ月の時間外労働が60時間を超え、深夜労働があった場合:75%以上

上記を踏まえ、以下の具体例で残業代を計算してみましょう。

  • 基礎賃金1,250円(月給21万円÷所定老日数21日÷8時間)
  • 朝残業:月間10時間
  • {1,250円×1.25}×2=15,625円

朝残業の残業代未払いが常態化すれば、請求できる金額は大きくなります。泣き寝入りせず、受け取る権利のある残業代はしっかり請求しましょう。

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朝残業で残業代未払いを防ぐためのポイント

ここでは、朝残業で残業代の未払いを防ぐためのポイントをみていきましょう。

朝残業をおこなった記録を残しておく

残業代未払いを防ぐためには、朝残業をおこなった記録を残しておくことが大切です。

出社時間をメモしておく、パソコンのログイン・ログアウト時間を残しておく、早朝やり取りのメール履歴のバックアップをとっておくなどの対策をとりましょう。

会社に対する残業代請求の際に使えるだけでなく、万が一、労働基準監督署や弁護士に相談する際にも役立ちます。

指示があったという記録を残しておく

労働基準法における「労働時間」は、会社や上司による指揮命令があった際に該当します。

そのため、朝残業をする場合は「指示があった」という記録を残しておくことが大切です。

上司から早朝出勤を命じられた際のメール履歴や音声などがあれば、朝残業として認めらる可能性が高まります。

就業規則で残業代の取り扱いを確認する

朝残業で残業代未払いを防ぐためには、就業規則で残業代の取り扱いを確認しておくことも大切です。

年俸制や固定残業代制度、裁量労働制などが適用されている場合は、現時点で受け取っている賃金に残業代が含まれているケースが多々あります。

特にコロナ以降は、正確な算定が困難になっていることもあるので、注意が必要です。

朝残業分の残業代が支払われているかを確認する

朝残業をおこなった際は、必ず朝残業分の残業代が支払われているかを確認しましょう。

給与明細を通して「そもそも残業代が支払われているかどうか」を確認しなければ、残業代請求ができません。

朝残業しているのに残業代が支払われていない場合の対処法

朝残業をしており、残業と認めているにもかかわらず、会社が支払いに応じてくれないケースがあります。

ここでは、朝残業しているのに残業代が支払われないときの対処法をみていきましょう。

上司や人事担当に相談する

残業代が支払われていない場合は、上司や人事担当者に相談しましょう。

朝残業代を請求する際は、証拠をもとに「いつ、どんな目的で、誰の指示のもと、朝残業をおこなったのか」を示す証拠を提示するとスムーズです。

労働基準監督署に相談する

労働基準監督署は、労働に関するトラブルの相談・監督指導などをおこなう厚生労働省が設置している機関です。

そのため、朝残業をおこなったにもかかわらず残業代が支払われない場合は、労働基準監督署に相談するのもよいでしょう。

無料で相談できるだけでなく、匿名で申告することも可能です。

ただし、労働基準監督署が実際に動いてくれるのは、証拠がある場合です。現時点で証拠が不十分な場合は後述する弁護士への相談をおすすめします。

未払い残業代の必要な証拠について未払い残業代を企業に請求する手順と必要な証拠とは?をご覧ください。

労働問題が得意な弁護士に相談する

朝残業の残業代が支払われない際は、労働問題が得意な弁護士に相談しましょう。

弁護士に相談・依頼すれば、必要な証拠についてや正確な計算方法などのアドバイスを受けられるだけでなく、会社との交渉代行も任せられます

また、万が一訴訟や裁判に発展した場合でも、弁護士が手続きをおこなうことが可能です。

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朝残業に取り組む方が知っておくべき注意点

ここでは、朝残業に取り組む方が知っておくべき注意点をみていきましょう。

36協定を締結していないと残業はできない

朝・夜を問わず、社員を残業(法定時間外労働)させるためには、会社と労働者の過半数を代表する社員との間で36協定を締結しておかなければなりません。

本来の法定労働時間は「1日8時間および週40時間」と定められており、法定労働時間を超える場合は36協定の締結・届出が必要です。

36協定締結の有無は、社員向けの書面や社内提示などで確認できます。

未払い残業代の請求権には消滅時効がある

未払い残業代の請求権には消滅時効があるため、注意が必要です。労働基準法では、残業代請求権に関して以下のように定められています。

(時効)

第百十五条 この法律の規定による賃金の請求権はこれを行使することができる時から五年間、この法律の規定による災害補償その他の請求権(賃金の請求権を除く。)はこれを行使することができる時から二年間行わない場合においては、時効によつて消滅する。

引用元:労働基準法 | e-Gov法令検索

③ 第百十五条の規定の適用については、当分の間、同条中「賃金の請求権はこれを行使することができる時から五年間」とあるのは、「退職手当の請求権はこれを行使することができる時から五年間、この法律の規定による賃金(退職手当を除く。)の請求権はこれを行使することができる時から三年間」とする。

引用元:労働基準法 | e-Gov法令検索

残業代請求の時効は、2020年4月1日より従来の2年から3年に延長されています。時効停止措置をとらなければ、3年より以前の残業代は請求できなくなります

時効を回避するためには、内容証明郵便の郵送、裁判を起こすなどの方法がありますが、弁護士に相談するほうがスムーズかつ有利に交渉を進められます。

まとめ|朝残業の残業代未払いは弁護士に相談!

業務に必要、かつ上司の指示があった場合の朝残業は、残業代請求が可能です。朝残業の必要性や、自身の意思ではなく上司に指示されておこなった、という事実を証明する記録があれば、残業代を請求できます。

一方で、証拠があったからといって会社が速やかに残業代背急に応じてくれるという保障はありません。

朝残業の残業代請求でお困りの方は、早めに弁護士に相談しましょう。

残業代請求の相談窓口は残業代請求の相談窓口|無料相談できる窓口や弁護士に相談するメリットを解説をご覧ください。

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編集部
本記事はベンナビを運営する株式会社アシロが企画・編集をおこないました。
  • ※ベンナビに掲載されているコラムは、必ずしも弁護士が執筆したものではありません。
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