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飲食店でも残業代はもらえる!よくある誤解や請求方法を解説

弁護士監修記事
労働問題
2023年09月29日
2024年04月22日
飲食店でも残業代はもらえる!よくある誤解や請求方法を解説
この記事を監修した弁護士
(アシロ 社内弁護士)
この記事は、株式会社アシロの『ベンナビ編集部』が執筆、社内弁護士が監修しました。

飲食店で働いていると、残業代が出なかったり、一部の業務を残業と扱ってもらえなかったりすることがあるかもしれません。

飲食店の従業員として働いている場合、法律上、雇用主である飲食店は残業代を支払う必要がありますが、店長や先輩社員などに残業代は出ないと言われてしまうと、なんとなく不安になってしまいますよね。

本記事では、飲食店における残業代へのよくある誤解や、正しい請求方法について解説します。

飲食業界で働く方々は、ぜひ参考にして役立ててください。

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「飲食店では残業代はもらえない」は嘘。労働基準法に基づいて理由を解説

飲食店で働く従業員の中には、「飲食店では残業代はもらえない」という誤解を抱いている方や、実際に残業代がもらえていないという方がいます。

しかし実際には、どんな飲食店であっても、従業員として雇用されている限り、労働基準法によって適切な労働条件が保障されている必要があるため、飲食店だからといって残業代がもらえないということはありません

もし時間外労働をしているにもかかわらず、残業代が支払われていない場合には、支給すべき残業代を支給されていなかったり、残業として扱うべき時間を業務ではないとみなされたりすることで、未払いの残業代が発生している可能性があります。

飲食店の残業代についてよくある誤解

それでは、飲食店では残業代が出ないという話はどこから生まれたのでしょうか。

以下では、残業代に関するよくある質問に回答します。

残業が30分未満の場合は残業代は出ない?

飲食店の残業代に関するよくある質問のひとつに、残業時間が30分未満の場合、残業代が出ないのではないかというものがあります。

しかし、残業代の支払いは原則として1分単位でおこなうことになっており、1分単位でおこなわなければ、違法となる可能性が高いでしょう。

これは、労働基準法上、賃金は全額支払わなければならないという「賃金全額払いの原則」が定められていることに加え、残業した場合には残業代を支払わなければならないことが定められているためです。

一部の例外を除いて、残業代の支払いは1分単位でおこなうことが義務付けられています。

(賃金の支払)
第二十四条 賃金は、通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければならない。ただし、法令若しくは労働協約に別段の定めがある場合又は厚生労働省令で定める賃金について確実な支払の方法で厚生労働省令で定めるものによる場合においては、通貨以外のもので支払い、また、法令に別段の定めがある場合又は当該事業場の労働者の過半数で組織する労働組合があるときはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がないときは労働者の過半数を代表する者との書面による協定がある場合においては、賃金の一部を控除して支払うことができる。
引用元:労働基準法|e-Gov法令検索

(時間外、休日及び深夜の割増賃金)
第三十七条 使用者が、第三十三条又は前条第一項の規定により労働時間を延長し、又は休日に労働させた場合においては、その時間又はその日の労働については、通常の労働時間又は労働日の賃金の計算額の二割五分以上五割以下の範囲内でそれぞれ政令で定める率以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならない。ただし、当該延長して労働させた時間が一箇月について六十時間を超えた場合においては、その超えた時間の労働については、通常の労働時間の賃金の計算額の五割以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならない。
引用元:労働基準法|e-Gov法令検索

休憩時間に業務をおこなった場合は残業代は出ない?

飲食店では、ランチとディナータイムの間に大きな休憩を取ることがあり、その時間に業務をした場合には、その時間の残業代はつかないといわれることがあるようです。

しかし、実際にはランチタイム終了後にも接客をしたり、ディナータイムの仕込みをしたりする必要があり、まとまった時間の休憩が取れないことがあるかもしれません。

しかし、たとえ就業規則で長時間の休憩時間が設定されていたとしても、休憩時間中に業務をおこなった場合は労働時間とみなされます

つまり、休憩時間中の業務も労働時間に含まれ、残業代の対象となる可能性が高いでしょう。

メニューの考案や施策の時間は残業代が出ない?

飲食店の従業員がメニューの考案や施策の立案に時間を費やした場合、会社からの指示であるならば、それは労働時間にあたります

そのため、休憩中やメインの業務終了後であっても残業代の対象になると考えられます。

店長やマネージャーには残業代が出ない?

結論から言うと、店長やマネージャーに残業代が出るかどうかは、労働基準法に定める管理監督者に該当するか否かによって異なります

労働者に対しては、1日8時間・週40時間を超える時間外労働(残業)および休日労働や深夜労働に対しては割増賃金が支払わなければなりません。

しかし、労働基準法上、管理監督者(監督若しくは管理の地位にある者)に関しては、深夜労働に対する割増賃金の支給と年次有給休暇の付与を除き、労働基準法の労働時間、休憩及び休日に関する規定が適用されないことが以下のとおり定められています。

(労働時間等に関する規定の適用除外)
第四十一条 この章、第六章及び第六章の二で定める労働時間、休憩及び休日に関する規定は、次の各号の一に該当する労働者については適用しない。
一 別表第一第六号(林業を除く。)又は第七号に掲げる事業に従事する者
二 事業の種類にかかわらず監督若しくは管理の地位にある者又は機密の事務を取り扱う者
三 監視又は断続的労働に従事する者で、使用者が行政官庁の許可を受けたもの
引用元:労働基準法|e-Gov法令検索

残業代がもらえないケースとしては、「店長やマネージャーは管理監督者である」という考えのもと、就業規則で残業代を支給しないことを定めている会社であることが考えられます。

ただし、管理監督者に該当するためには、「労働時間、休憩、休日等に関する規制の枠を超えて活動せざるを得ない重要な職務内容を有していること」、「労働時間、休憩、休日等に関する規制の枠を超えて活動せざるを得ない重要な責任と権限を有していること」、「現実の勤務態様も労働時間等の規制になじまないようなものであること」、「賃金等について、その地位にふさわしい待遇がなされていること」といった要素を満たす必要があります。

必ずしも店長やマネージャーが管理監督者であるわけではありません。

そのため、店長やマネージャーだからといって残業代がもらえなくなるとは必ずしも言い切れません

なお、管理監督者の定義や判断基準に関しては、こちらの記事でも詳しく解説しています。

【参考記事】管理監督者とは|管理者の正しい定義と監督者の扱いに関するトラブル対処法

研修中や見習いの間は残業代は出ない?

研修中や見習い期間中の従業員であっても、労働をしていれば労働時間としてカウントされます。

そのため、労働時間に応じて、もちろん残業代も支払われる必要があります。

万が一、「試用期間中は残業代を支払わない」旨が会社との雇用契約や就業規則で定められていたとしても、労働基準法が優先されるため、研修中や見習いの間であることを理由に残業代を支払わないのは違法となる可能性が高いでしょう。

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飲食店で残業代を請求する方法

本来もらえるはずの残業代をもらえていない場合は、適切な手続きを踏むことで、残業代を請求することが可能です。

以下では、飲食店で残業代を請求する方法を解説します。

残業代の消滅時効を止める

残業代の請求には3年間という時効があるため、請求をおこなう前にまず、残業代の消滅時効の完成を止めておくことをおすすめします(2020年3月31日以前に発生した残業代の場合は2年間)。

時効の完成を一時的に止めるための方法としては、会社側に残業代の請求書もしくは請求する旨を記載した書面を内容証明郵便で送ることがあげられます。

ただし、この方法で時効の完成を止められるのは6ヵ月間に限られるため、その間に交渉を終えることができなければ、労働審判や裁判を提起する必要があります。

残業をしたことや残業代が支払われていない旨の証拠を集める

残業代を請求するためには、残業をしたことや残業代が支払われていない旨を証明できる証拠が必要です。

なお、証拠を集める際には「労働条件に関するもの」「労働時間に関するもの」を意識して探すとよいでしょう。

証拠の一例として、以下のようなものが挙げられます。

《労働条件に関する証拠の一例》

  • 雇用契約書
  • 労働条件通知書
  • 給与に関する規程
  • 就業規則 など

《労働時間に関する証拠の一例》

  • タイムカード
  • シフト表
  • 日報
  • 給与明細
  • レジ端末の記録
  • 店舗の開店時間および閉店時間
  • 業務に関連するメールの送信記録
  • 家族などへの帰宅を知らせるメッセージの送信履歴 など

飲食店での残業代請求では、開店前の準備時間や休憩時間に働いていたかどうかが争われるケースが多くあります。

これらに関して、休憩時間中や開店前の準備時間の勤務実績が反映されたタイムカードや日報などを示すことができれば、証拠として立証できるでしょう。

もし、タイムカード等に準備時間や休憩時間中の勤務実績が反映されていない場合には、ご自身で記録を残しておくことをおすすめします。

必要な証拠について未払い残業代を企業に請求する手順と必要な証拠とは?をご覧ください。

会社側と交渉をおこなう

未払いの残業代があることを証明する証拠が集まったら、会社(雇用主)側との交渉をおこないます。

まずは、直属の上司や人事部などの担当者と面談し、問題の解決を図ってみましょう。

交渉の際には、実際の残業時間に基づく残業代を具体的に算定して、支払いを求めることが重要です。

もし、残業代の計算や交渉に不安を感じたりする場合には、弁護士に相談・依頼するのもひとつの方法といえます。

残業代の計算については年俸制で残業代が出ない場合は損している!残業代の計算方法と請求方法を解説をご覧ください。

労働審判や訴訟をおこなう

もし会社(雇用主)側との交渉がまとまらなかった場合や、不当な対応が続く場合は、労働審判や訴訟を起こすことも検討しましょう。

労働審判や訴訟を提起する際には、裁判所に対して訴状・申立書といった主張書面や証拠を提出する必要があるため、労働問題に強い弁護士に依頼して、労働審判や訴訟を起こすこともひとつの方法です。

法的手続きを通じて適切な権利の回復を目指しましょう。

労働審判については労働審判で未払いの残業代を取り戻す方法|手続きの流れやかかる費用を解説をご覧ください。

まとめ|飲食店でも残業代はもらえる。悩んだら弁護士に相談

「飲食店では残業代が出ない」という話はよく聞かれますが、実際には、本来支払われるべき残業代が支払われていなかったり、労働時間としてみなすべき時間がカウントされていなかったりするということがほとんどです。

労働基準法に照らし合わせることで、未払いの残業代を請求できる場合もあるため、残業代のトラブルに悩んだら労働問題に強い弁護士に相談してみることをおすすめします。

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本記事はベンナビを運営する株式会社アシロが企画・編集をおこないました。
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  • ※本記事の目的及び執筆体制についてはコラム記事ガイドラインをご覧ください。
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