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誹謗中傷の慰謝料請求ガイド|高額な損害賠償金を獲得するコツも

弁護士監修記事
ITトラブル
2023年04月28日
2024年04月22日
誹謗中傷の慰謝料請求ガイド|高額な損害賠償金を獲得するコツも
この記事を監修した弁護士
立花志功弁護士 (立花志功法律事務所)
北海道・札幌にある地域密着型の弁護士事務所。IT問題に注力しており、インターネット上のトラブルを迅速に対応しています。
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近年、インターネット上での誹謗中傷トラブルが増加傾向にあります。

誹謗中傷された場合の対処法には、削除要請や刑事告訴などのほかに、特定した投稿者に対して慰謝料請求をすることが考えられます。

しかし、慰謝料の相場や投稿者の特定方法、具体的な請求方法などを知らなければ、加害者に対して慰謝料を請求するのは困難といえます。

この記事では、インターネット上で誹謗中傷被害に遭った方に向けて、誹謗中傷による慰謝料の相場、慰謝料を増額するためのポイント、匿名の投稿者を特定するための手続き、加害者に慰謝料を請求する方法などについて解説します。

SNSや匿名掲示板などで誹謗中傷をしている加害者を特定し、慰謝料を請求するための参考にしてください。

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誹謗中傷されたら慰謝料を請求できる

誹謗中傷された場合に慰謝料を請求できるかどうかは、その誹謗中傷が民法上の不法行為に該当するかどうかで異なります。

不法行為とは、故意や過失により他人の権利・利益を侵害する行為を指します。

誹謗中傷による名誉権やプライバシー権などの侵害は不法行為に該当するため、加害者に対して損害賠償を請求することができます。

(不法行為による損害賠償) 第七百九条 
故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。
引用元:民法 | e-Gov法令検索

誹謗中傷による慰謝料金額の目安

誹謗中傷による慰謝料金額の相場は、不法行為の種類や内容によって変化します。

誹謗中傷と関係する主な不法行為には、名誉毀損、侮辱、プライバシー侵害などがあります。

ここでは、それぞれの不法行為の内容と慰謝料金額の相場について解説します。

1.名誉毀損

名誉毀損とは、事実の真偽に関係なく、公の場で他人の社会的評価を低下させる事実を摘示する行為を指します。

たとえば「上司の○○が△△と不倫していた」「職場で○○が暴行を働いていた」などを言ったり、書いたりした場合に成立する可能性があります。

インターネット上のトラブルの中でもかなり多い相談のひとつです。

【名誉毀損の場合の慰謝料相場】


個人の場合


10万~50万円程度


企業の場合


50万~100万円程度

名誉毀損罪の「事実」については名誉毀損罪の「事実」って何?具体例を確認しながら意味を理解しようもご覧ください。

2.侮辱

侮辱とは、事実の摘示はないものの、公の場で他人の名誉感情を侵害する行為を指します。

「○○はバカだ」「気持ち悪い」「ブサイクだ」「DQNだな」などのような、他人を傷つけることを言ったり、書いたりした場合に成立する可能性があります。

一般的な傾向として、名誉毀損よりも侮辱のほうが慰謝料金額は低額となっています。 

【侮辱の場合の慰謝料相場】


一般的な場合


1万~10万円程度


悪質な場合


10万円以上

3.プライバシー侵害

プライバシー侵害もインターネット上で多いトラブルのひとつです。

プライバシー侵害とは、本人が望んでいない私生活上の事実などを、本人の許可がないにもかかわらず無断で公開する行為を指します。

たとえば、本名、住所、電話番号、犯罪歴、破産情報などを書き込んだり、本人の顔写真を投稿したりした場合に成立する可能性があります。

【プライバシー侵害の場合の慰謝料相場】


一般的な場合


10万~50万円程度


悪質な場合(ヌード写真の投稿など)


100万円以上

顔写真等を晒された場合ネットに顔を晒されたときの対処法|顔写真を削除する3つの方法もご覧ください。

誹謗中傷トラブルの慰謝料を増額させるポイント

誹謗中傷による慰謝料をできる限り多く請求したいなら、任意の交渉で解決を目指す、増額できる事情を示す、弁護士に相談・依頼するなどがポイントになります。

ここでは、慰謝料を増額させるためのポイントを確認しましょう。

1.交渉で解決を目指す

慰謝料の請求方法には、交渉、調停、訴訟などがあります。

それぞれにメリット・デメリットがありますが、高額の慰謝料を受け取りたいなら、交渉で解決を目指すのがおすすめです。

交渉であれば慰謝料金額を柔軟に決められますし、加害者に「訴訟を回避したい」などの希望がある場合は相場よりも高い慰謝料を受け取れる可能性があります。

2.増額できる事情を示す

慰謝料金額の算定では、不法行為の内容だけでなく、被害の程度や被害者の地位・職業なども考慮されます。

慰謝料の増額要素が示すことができれば、より多くの慰謝料を請求できる可能性があります。

たとえば、名誉毀損の事件では以下のような事情が考慮されることが多いため、当てはまる要素があるかどうかを確認しておきましょう。

【誹謗中傷での慰謝料算定で考慮される要素(名誉毀損の場合)】

 

被害者側の事情


✔職業や役職など社会的地位が高いか
✔どれくらい社会的評価が低下したか
✔行為によりどのような被害が生じたか など

 


加害者側の事情


✔不法行為が悪質かどうか
✔表現の内容がどれくらい下劣か
✔行為によって営業的利益を得ているか
※行為後の加害者の対応が良好か(減額要素)
※公共性・公益性を満たしているか(減額要素) など

3.弁護士に相談・依頼する

慰謝料請求は被害者自身もおこなえますが、できる限り弁護士に相談・依頼するほうが望ましいでしょう。

弁護士であれば、過去の裁判例などを参考に適正な金額の慰謝料を算定してくれますし、有利な条件で和解が成立するよう交渉などを進めてくれます。

実際、弁護士に依頼したことで、高額の慰謝料で和解できた事例も多くあります。

匿名掲示板への誹謗中傷書き込みで150万円以上の賠償金を獲得できた事例

まずは、ナイトワークに従事している相談者が、匿名掲示板で繰り返し誹謗中傷を受けていた事例です。

弁護士は、誹謗中傷をしていた複数の加害者を特定し、それぞれに対して二度と誹謗中傷をしないことを誓約させ、慰謝料を支払わせることに成功します。

加害者が複数いたことなども関係し、慰謝料の合計額は150万円以上となりました。

SNS上で誹謗中傷をした加害者を特定し、110万円の賠償金を獲得できた事例

次に、インフルエンサーがSNS上で商品紹介をしたところ、人格を攻撃するような誹謗中傷を受けた事例です。

弁護士は、運営会社やプロバイダに対して発信者情報開示請求をおこない、誹謗中傷を繰り返していた加害者を特定します。

そして、損害賠償請求訴訟を提起した結果、110万円の賠償金で和解を成立させることに成功します。

インターネット上の匿名投稿者を特定する方法

慰謝料請求をするためには、加害者の本名と住所などの情報が必要です。

しかし、インターネット上の誹謗中傷は匿名でおこなわれていること多くあります。

そこで任意の開示請求や裁判手続きによって、匿名投稿者を特定する必要があります。

ここでは、インターネット上の匿名投稿者を特定するための方法について確認しましょう。

任意の開示請求をおこなう場合

インターネット上で誹謗中傷され、権利侵害を受けている場合は、サイト管理者に対して投稿者の氏名、住所、IPアドレス、タイムスタンプなどの開示を求めることができます。

開示請求の方法はサイトによって異なりますが、通常は専用フォームを設けていたり、「発信者情報開示請求書」を送付したりしておこないます。

また、匿名掲示板などの会員登録が不要なWebサイトで誹謗中傷されている場合は、まずサイト管理者から投稿者のIPアドレスやタイムスタンプを入手し、それから特定したプロバイダに対して投稿者の氏名や住所を開示するよう請求します。

プロバイダが任意の開示請求に応じた場合は、投稿者の氏名や住所を知ることができます。

裁判手続きで開示請求する場合

サイト管理者やプロバイダが任意の開示請求に応じてくれない場合は、裁判手続きで投稿者の特定をおこなう必要があります。

裁判手続きには、従来の「発信者情報開示請求」と、2022年10月1日の改正プロバイダ責任制限法の施行と同時に開始された「発信者情報開示命令」の2種類があります。

それぞれの手続きについて確認しましょう。

従来の「発信者情報開示請求」による方法

発信者情報開示請求ではまず、裁判所に対してサイト管理者を相手方として投稿者のIPアドレスやタイムスタンプを開示させるための仮処分命令の申し立てをおこないます。

債権者面接や双方審尋などがおこなわれ、担保金を納めたら、裁判所から仮処分命令が下されます。

その後、サイト管理者から投稿者のIPアドレスなどが開示されます。

また、開示されたIPアドレスからプロバイダを特定したら、今度はプロバイダを相手方として投稿者の氏名や住所を開示させるための訴訟を提起します。

この訴訟で勝訴判決を得ることができれば、投稿者(契約者)の氏名や住所などの個人情報が開示されます。

なお、発信者情報開示請求の場合9~10ヵ月程度の期間を要するのが一般的です。

発信者情報開示請求については発信者情報開示請求とは|投稿者特定の手続き・注意点・弁護士費用などを解説をご覧ください。

新設の「発信者情報開示命令」による方法

発信者情報開示命令の特徴は、サイト管理者への開示請求事件とプロバイダへの開示請求事件を併合して一体的に審理し、迅速に投稿者の氏名や住所を開示してもらうことです。

実際、発信者情報開示命令の場合は、3~6ヵ月程度で加害者の氏名や住所を開示させられます。

発信者情報開示命令の大まかな流れは、以下のとおりです。

【発信者情報開示命令の大まかな流れ】

  1. サイト管理者を相手方とする発信者情報開示命令と提供命令の申し立てをおこなう
  2. 提供命令で開示されたプロバイダを相手方とする発信者情報開示命令と削除禁止命令の申し立てをおこなう
  3. サイト管理者に対して「プロバイダへ発信者情報開示命令の申し立てをおこなった」という旨を知らせる
  4. 裁判所がサイト管理者への開示請求事件とプロバイダへの開示請求事件を併合して審理をおこなう

誹謗中傷被害に遭った場合の慰謝料の請求方法

任意開示や裁判手続きで投稿者を特定できたら、加害者に対して慰謝料請求をおこないます。

慰謝料請求の方法には交渉、調停、訴訟などの種類があり、一般的には「交渉→調停→訴訟」の順番で請求します。

ここでは、慰謝料の請求方法の特徴や具体的な方法などについて確認しましょう。

1.直接交渉をする

まずは、裁判外で当事者同士の話し合いをおこない、和解を目指します。

一般的な交渉は、内容証明郵便を送付するところから始まり、加害者から反応があれば慰謝料金額の調整や、口外禁止条項(第三者に口外しないことを約束すること)について取り決めをします。

和解が成立すれば、合意書や和解書を作成することになります。

2.調停で話し合う

交渉が不成立となった場合や内容証明郵便を無視されている場合には、裁判所の調停官と調停委員を交えた調停手続きで解決を目指します。

仲介役である調停委員が当事者双方の主張や資料を確認し、解決策を提示してくれたり、アドバイスをしてくれたりします。

調停が成立した場合は、法的拘束力を有する「調停調書」が作成されます。

3.訴訟を提起する

交渉や調停で話し合いがまとまらなかった場合は、裁判所に対して損害賠償請求訴訟を提起する必要があります。

訴訟では主張や立証を重ねていき、裁判所から和解案が提示されたり、最終的な判決が下されたりします。

和解が成立した場合や勝訴判決が得られた場合には、加害者から慰謝料を受け取ることができます。

誹謗中傷の慰謝料請求に関するよくある質問

最後に、誹謗中傷の慰謝料請求に関するよくある質問・疑問に回答します。

Q.誹謗中傷を目撃した際にできることはある?

SNSや匿名掲示板などで誹謗中傷の投稿を発見したら、絶対にその投稿を共有・拡散しないようにしましょう。

安易に投稿を共有・拡散してしまうと、被害者をさらに傷つけてしまいます。

また、投稿の共有・拡散に加えて、自分も被害者を誹謗中傷するような投稿をしている場合は不法行為になるリスクがあるので注意が必要です。

Q.慰謝料請求では必ず満額支払われる?

慰謝料請求をした場合、相手方が請求どおりに慰謝料を支払うこともありますが、慰謝料を減額するよう交渉してくることもあります。

そのため、必ずしも希望どおりの慰謝料を受け取れるわけではありません。

また、訴訟に移行した場合は裁判所の判断になるため、被害状況などによっては請求金額よりも少なくなる可能性があります。

Q.弁護士費用は加害者に請求できる?

原則として、弁護士費用は全て自分で支払う必要があります。

しかし、不法行為による慰謝料請求のために弁護士に依頼した場合は、弁護士費用の1割程度を請求できるとされています。

実際、最高裁判所も「被害者が自己の権利擁護のために訴訟を余儀なくされた場合は、諸般の事情を考慮して相当額を請求できる」としています。

不法行為の被害者が、自己の権利擁護のため訴を提起することを余儀なくされ、訴訟追行を弁護士に委任した場合には、その弁護士費用は、事案の難易、請求額、認容された額その他諸般の事情を斟酌して相当と認められる額の範囲内のものにかぎり、右不法行為と相当因果関係に立つ損害というべきである。
引用元:裁判例結果詳細 | 裁判所 - Courts in Japan

Q.慰謝料請求できなくなる場合とは?

損害賠償請求権(慰謝料請求権)を行使する際は、消滅時効に注意する必要があります。

不法行為による慰謝料請求権の消滅時効は、被害者が損害および加害者を知ったときから3年間です。

また、排斥期間も設けられているため、不法行為のときから20年間経過した場合は、慰謝料請求権を行使できなくなります。

(不法行為による損害賠償請求権の消滅時効) 第七百二十四条
不法行為による損害賠償の請求権は、次に掲げる場合には、時効によって消滅する。
一 被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時から三年間行使しないとき。
二 不法行為の時から二十年間行使しないとき。
引用元:民法 | e-Gov法令検索

まとめ|誹謗中傷の慰謝料請求は弁護士に相談を

インターネット上の誹謗中傷が不法行為に該当する場合は、加害者に対して慰謝料を請求できます。

しかし、加害者を特定するための手続きや、加害者との交渉や法的手続きが必要になるため、被害者が自力でおこなうのは大きな負担となります。

そのため、インターネット上の誹謗中傷で困っている場合は、弁護士に相談・依頼するのがおすすめです。

弁護士に依頼すれば、手続きの負担を軽減できますし、慰謝料の増額も期待できるでしょう。

弁護士への相談は慰謝料請求の無料電話相談とは?利用すべき人と注意点を徹底解説!をご覧ください。

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編集部
本記事はベンナビを運営する株式会社アシロが企画・編集をおこないました。
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