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後遺障害12級の症状は?慰謝料の相場は?気になる疑問を徹底解説

弁護士監修記事
交通事故
2023年03月14日
2024年04月25日
後遺障害12級の症状は?慰謝料の相場は?気になる疑問を徹底解説
この記事を監修した弁護士
阿部 由羅弁護士 (ゆら総合法律事務所)
ゆら総合法律事務所の代表弁護士。不動産・金融・中小企業向けをはじめとした契約法務を得意としている。その他、一般民事から企業法務まで幅広く取り扱う。

後遺障害12級には、目や歯の障害、手や足の機能障害など14の症状が該当します。

とはいえ認定基準は複雑であるため、自分の症状がどれに該当するのか迷う方もいるのではないでしょうか。

「14級と12級のむちうちと、何が違うの?」「後遺障害12級に認定されると、障害者手帳は交付される?」など疑問を感じている方もいるかもしれません。

この記事では、後遺障害12級の症状や慰謝料の相場、認定までの流れ、気になる疑問をわかりやすく解説します。

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後遺障害12級の症状

後遺障害12級の認定基準は以下のとおりです。

1号 一眼の眼球に著しい調節機能障害または運動障害を残すもの
2号 一眼のまぶたに著しい運動障害を残すもの
3号 七歯以上に対し歯科補綴を加えたもの
4号 一耳の耳殻の大部分を欠損したもの
5号 鎖骨、胸骨、肋骨、肩甲骨または骨盤骨に著しい変形を残すもの
6号 一上肢の三大関節中の一関節の機能に障害を残すもの
7号 一下肢の三大関節中の一関節の機能に障害を残すもの
8号 長管骨に変形を残すもの
9号 一手の小指を失ったもの
10号 一手の人差し指、中指または薬指の用を廃したもの
11号 一足の第二の足指を失ったもの、第二の足指を含み二の足指を失ったもの、または第三の足指以下の三の足指を失ったもの
12号 一足の第一の足指または他の四の足指の用を廃したもの
13号 局部に頑固な神経症状を残すもの
14号 外貌に醜状を残すもの

参考記事:後遺障害等級表

それでは、ひとつずつみていきましょう。

1号|一眼の眼球に著しい調節機能障害または運動障害を残すもの

調節機能とは、近くや遠くのものを見る際のピントを合わせる機能を指します。

したがって、調節機能障害とは、ピントを合わせる機能に障害がある状態です。

具体的には、以下のケースが該当します。

  • 片眼のピント調節機能が2分の1以下に低下した
  • 眼球だけを動かして物を追える範囲が2分の1以下になった

調節機能障害の判断は、けがをしていない方の眼と比較しておこなわれます。

しかし、調節機能は年齢とともに衰える機能であることから、高齢の場合は、後遺障害として認定されにくい傾向があります。

2号|一眼のまぶたに著しい運動障害を残すもの

「著しい運動障害」には、以下の症状が該当します。

  • まぶたを開けているつもりでも、まぶたで瞳孔が隠れてしまう
  • まぶたを閉じているつもりでも、閉じられておらず瞳孔や角膜が露出してしまう

片方の眼だけではなく、両眼ともに上記の症状がある場合は、等級が上がり後遺障害11級になります。

11級に関しては後遺障害11級の認定基準や慰謝料相場・認定を受ける際の重要ポイントを紹介をご覧ください。

3号|七歯以上に対し歯科補綴を加えたもの

歯科補綴(しかほてつ)とは、歯がなくなったり折れたりした際に、人工物で補う治療を指します。

たとえば、ブリッジや入れ歯、差し歯を入れるなどです。

認められる欠損状態は、以下のとおりです。

  • 現実に喪失した場合
  • 見える部分の4分の3以上が欠損した歯に対して治療がおこなわれた場合

半分欠けただけの歯については、歯科補綴として認められない可能性があるので注意しましょう。

なお、歯の後遺障害は、治療が施された歯の本数によって等級が異なります。

歯の本数 後遺障害
3歯以上 14級
5歯以上 13級
7歯以上 12級
10歯以上 11級
14歯以上 10級

4号|一耳の耳殻の大部分を欠損したもの

耳殻(じかく)とは、耳介(じかい)ともいわれますが、ひとことで言うと「耳」です。

軟骨の部分から耳たぶまで、外から見えている耳全体を「耳介または耳殻」と呼び、耳殻を2分の1以上失った場合、後遺障害12級に該当します。

なお、耳の欠損は、「外見が醜くなった」として、「外貌の醜状」に認定され、等級が上がるケースもあります。

12級より高額な損害賠償を得られる可能性があるため、後遺障害を得意とする弁護士に相談してみましょう。

後遺障害に強い弁護士については後遺障害に強い弁護士の特徴とは?探すための4つの方法も解説をご覧ください。

5号|鎖骨、胸骨、肋骨、肩甲骨または骨盤骨に著しい変形を残すもの

鎖骨・胸骨・肋骨・肩甲骨・骨盤骨が骨折し、治癒する際に変形して残ってしまった状態です。

変形した骨の本数は問われませんが、目で見て明らかにわかる程度に変形している必要があります。

そのため、「レントゲン写真で見ると、なんとなく変形しているかも?」といったケースでは認められない可能性が高いので注意しましょう。

6号|一上肢の三大関節中の一関節の機能に障害を残すもの

一上肢の三大関節とは、片方の肩・肘・手首の関節を指します。

片方の肩関節・肘関節・手首の関節のうち、1つの関節に「動きにくくなった」「ひねりにくくなった」などの機能障害が残った状態です。

【関節の機能障害の例】

  • 関節を動かせる範囲が、けがをしていない方と比べて4分の3以下になった
  • 手のひらを上に向けたり、下に向けたりする動きの範囲が2分の1になった

可動域の測り方は、各関節で決まっているため、病院へ受診した際に確認しましょう。

7号|一下肢の三大関節中の一関節の機能に障害を残すもの

一下肢の三大関節とは、片方の股関節・膝・足首の関節を指します。

つまり、片方の股関節・膝関節・足首の関節のうち、1つの関節に動きにくさが残っている状態です。

機能障害の範囲は、6号の上肢と同じく「関節を動かせる範囲が、けがをしていない方と比べて4分の3以下」となっています。

人工関節の場合は、さらに重い後遺障害等級にて認定される可能性があります。

8号|長管骨に変形を残すもの

長管骨とは、腕や脚にある6本の長い骨を指します。

長管骨
腕の骨 脚の骨
上腕骨・橈骨(とうこつ)・尺骨(しゃっこつ) 大腿骨・腓骨(ひこつ)・脛骨(けいこつ)

いずれかの長管骨が、ねじ曲がっているなど、変形や欠損して障害が残っているケースが該当します。

9号|一手の小指を失ったもの

片手の小指を失った状態です。

指を失うとは、根本から切断された場合だけではなく、第二関節から先をすべて失った場合も含まれます。

10号|一手の人差し指、中指または薬指の用を廃したもの

片手の人差し指・中指・薬指のうち、いずれかの指が動きにくくなったり短くなったりした状態です。

具体的には、以下の症状があります。

  • 痛い、冷たい、など指の感覚がなくなった
  • 指の長さが半分になった
  • 第二関節から先の可動域が、もう片方の手に比べて2分の1以下になった

11号|一足の第二の足指を失ったもの、第二の足指を含み二の足指を失ったもの、または第三の足指以下の三の足指を失ったもの

第二の足指は「人差し指」、第三の足指以下は「中指より下の指」を表しています。

つまり、以下の3つの症状のうち、いずれかに当てはまると11号認定となります。

  • 片足の人差し指を失った
  • 片足の人差し指 + もう1本 = 合計2本の指を失った
  • 片足の中指・薬指・小指の3本を失った

12号|一足の第一の足指または他の四の足指の用を廃したもの

片足の親指1本、または親指以外の4本の指が、切断されたり動かしにくかったりする状態です。

以下の症状などが該当します。

  • 片足の親指の第一関節から指先までの骨が半分以上短くなった
  • 片足の親指以外の4本の指につき、第一関節から先を失った
  • 片足の人差し指・中指・薬指・小指を動かせる範囲が2分の1以下になった

13号|局部に頑固な神経症状を残すもの

体の一部に以下の症状が残っている状態です。

  • 体の一部が痛い
  • しびれる
  • 頭痛
  • めまい
  • 吐き気
  • 耳鳴り など

交通事故のケースでは、おもに「むちうち」が完治せずに残った痛みやしびれなどが該当します。

ただ、むちうちの場合は、後遺障害14級9号に認定されるケースもあります。

  • 14級9号…局部に神経症状を残すもの
  • 12級13号…局部に頑固な神経症状を残すもの

神経症状(神経障害)に関する12級と14級の違いは、画像検査の結果によって症状を証明できるかどうかの点にあります。

12級の認定を受けるためには、MRI検査やレントゲン検査を受け、痛みやしびれなどの原因が検査画像から読み取れることが必須条件です。

「むちうちだから」と放置せず、適切な検査を受けましょう。

また14級の症状に関しては後遺障害14級はどんな症状で認定される?慰謝料が増額した実例を交えて解説

14号|外貌に醜状を残すもの

平たくいうと、顔や首に大きな傷跡が残った状態です。

具体的には、以下のような症状を指しています。

部位 傷跡
頭部 ・鶏の卵より大きな傷跡が残った
・頭蓋骨に鶏の卵より大きい欠損が残った
顔面 ・10円玉より大きな傷跡が残った
・3㎝以上の手術の痕が残った
頸部(首) 鶏の卵より大きな傷跡が残った

また、まつげが生えなくなってしまった「まつげはげ」や、耳を失ってしまった「耳の欠損」などの場合も、14号に該当する可能性があります。

一方、頭や顔の傷跡であっても、髪の毛で隠れる傷跡や手術痕は、認定されません。

「どっちだろう?」と迷う際は、かかりつけの医師や、交通事故を得意とする弁護士に相談しましょう。

後遺障害12級の賠償金

後遺障害12級に認定された場合、以下の2つの損害賠償を請求できます。

  • 後遺障害慰謝料
  • 後遺障害逸失利益

後遺障害慰謝料の相場

後遺障害慰謝料の算定基準は、3パターンあります。

各基準の概要と、後遺障害12級の慰謝料相場は、以下のとおりです。

基準 概要 後遺障害12級の慰謝料相場
自賠責基準 運転者に加入が義務付けられている「自賠責保険」の保険金を算定する基準 94万円
*2020年3月までに起こった交通事故の場合は93万円
任意保険基準 任意保険会社が独自に定めた基準 保険会社によって異なるが、自賠責基準より少し高く、弁護士基準よりかなり低い傾向
弁護士基準 裁判例に基づいて損害額を算出する基準。裁判所基準とも呼ばれる 290万円

弁護士に相談・依頼すると、弁護士基準で請求してもらえるため、慰謝料を増額できる可能性があります。

慰謝料の相談は慰謝料請求の無料電話相談とは?利用すべき人と注意点を徹底解説!をご覧ください。

後遺障害逸失利益

後遺障害逸失利益とは、本来得られるはずだった収入が、後遺症などを理由に減ってしまったことに対する補償です。

1年あたりの基礎収入や働けない期間、どのくらい労働能力が低下したかを数値化して計算します。

【逸失利益の計算式】

逸失利益=1年あたりの基礎収入×労働能力喪失率×労働能力喪失期間に対するライプニッツ係数

金額は、被害者の年齢や、収入、労働できない期間などによって、一人ひとり異なるため、自分のケースを試算してほしい場合は、弁護士に相談することをおすすめします。

【参考記事】
国土交通省|労働能力喪失率表
国土交通省|就労可能年数とライプニッツ係数表

後遺障害12級認定までの流れ

後遺障害認定の申請方法は、自分で手続きをする「被害者請求」と、相手方の保険会社に任せる「事前認定」の2パターンあります。

【申請の手順】

事前認定の場合 被害者請求の場合
✓症状固定の診断を受ける
✓医師に後遺障害診断書を作成してもらう
✓相手方の保険会社に診断書を渡す
✓相手方の保険会社を通じて認定結果が通知される
✓症状固定の診断を受ける
✓医師に後遺障害診断書を作成してもらう
✓交通事故証明書など、診断書以外に必要な書類を集め、自分で提出・申請する
✓認定結果が通知される

事前認定では、相手方の保険会社に任せるため、「診断書を提出したあとは、結果を待つだけ」です。

一方、被害者請求は、後遺障害診断書以外の書類も、全て自分で集めて提出しなければならず、手間がかかります。

とはいえ、相手方の保険会社に任せた場合、書類がどのように記載されたかの確認や、追加書類の提出などができません。

そのため、審査対策が思うようにできず、納得できない認定結果になる可能性があります。

手間はかかりますが、適切な等級の認定を受けるには、被害者請求をすることをお勧めいたします。

後遺障害12級の気になる疑問

後遺障害12級に関して、被害者が悩みがちな2つの疑問について回答します。

  • 後遺障害12級と14級の「むちうち」の違いは?
  • 後遺障害12級での障害者手帳の取得は難しい?

後遺障害12級と14級の「むちうち」の違いは?

後遺障害12級と14級の「むちうち」の違いは、画像から客観的に症状を証明できるか否かです。

たとえば、検査によって以下のような画像所見が得られ、痛みやしびれなどの症状が証明できると12級の認定を受けられる可能性があります。

検査 画像所見の例
MRI検査 ✓神経組織が圧迫されている
✓椎間板ヘルニアがある
レントゲン検査 ✓脊柱管がズレている
✓頸部の骨の曲がり方が異常
✓骨が神経を圧迫している
✓骨に傷がある

これに対して、画像所見が得られず自覚症状のみにとどまる場合は、14級認定の可能性にとどまります。

レントゲン撮影などの画像検査を受けていない場合は、まずは適切な検査を受けましょう。

後遺障害12級での障害者手帳の取得は難しい?

「後遺障害12級に認定されると、身体障害者手帳の交付を受けられるかもしれない」と思う方もいるかもしれません。

医療費助成などのメリットがあるため、できれば交付を受けたいところです。

身体障害者手帳の交付を受けるには、「身体障害者障害程度等級表」の1級から7級のいずれかに該当する必要があります。

同等級表に照らすと、後遺障害12級に該当する症状が、身体障害者1級から7級に該当するケースは少なく、身体障害者手帳の交付を受けることは難しいでしょう。

ただし、障害が2つ以上重なった場合など、具体的な症状によっては身体障害者等級の認定を受けられる可能性があります。

まとめ|後遺障害12級の認定は弁護士に相談しよう

後遺障害12級の認定基準を満たしていると思われる場合でも、必ず認定を受けられるわけではありません。

適正な後遺障害等級の認定を受けるには、後遺症の症状や程度を証明することがポイントとなります。

特に重要となる「後遺障害診断書」の記載内容は、事前の確認が必要不可欠です。

弁護士に相談すれば、後遺障害診断書を確認したうえで、適正な後遺障害等級の認定を受けるためのアドバイスをしてもらえます。

また、万が一トラブルになった際や訴訟を起こす際も、代理人として対応を一任できるため、心強い存在になるでしょう。

無料相談を行っているところもあるので、交通事故被害にお悩みの方は、お早めに弁護士へご相談ください。

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編集部
本記事はベンナビを運営する株式会社アシロが企画・編集をおこないました。
  • ※ベンナビに掲載されているコラムは、必ずしも弁護士が執筆したものではありません。
  • ※本記事の目的及び執筆体制についてはコラム記事ガイドラインをご覧ください。
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